論文紹介:診察室でよく聞く“眠れない”を、全国データで確かめました!

 COVID-19の回復後にも「眠れない」「寝ても疲れが取れない」といった睡眠の問題が続くことは、患者さんの声として広く知られています。診療の場でも、呼吸器症状が落ち着いた後に睡眠の質低下が前面に出てくるケースは少なくありません。しかし、個々の体験として語られることが多い一方で、日本全国規模のデータから“どのくらいの人が、いつ、どの程度”影響を受けるのかを定量的に示すことは容易ではありませんでした
 そこで本研究では、厚生労働省のレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を活用し、COVID-19罹患後に不眠治療薬(insomnia pharmacotherapy)が新規に開始される頻度を詳細に評価しました。単に「不眠の診断名」を数えるのではなく、実際の医療行動としての“処方”に着目することで、臨床の現場で起きている変化をより実態に近い形で捉えることを目指しました。
解析では、年齢や性別、併存疾患などの背景因子をそろえた大規模コホートを構築し、感染歴のある群とない群を比較しました。その結果、COVID-19感染歴のある群ではどの年代、性別においても不眠治療薬の新規処方が増加しており、感染後12か月以降もリスク上昇が持続する可能性が示されました。
 睡眠は、身体・精神の回復を支える基盤であり、就労や学業、家庭生活など日常機能にも影響します。本研究の知見は、ポストコロナのフォローアップにおいて、身体症状だけでなく睡眠の状態を丁寧に評価し、必要に応じて早期に支援へつなぐことの重要性を示唆します。今後も当研究室では、大規模データと疫学・データサイエンスの手法を活用し、臨床現場の“実感”をエビデンスとして可視化し、よりよい医療と健康支援につながる研究を進めてまいります。
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